第二話 ~導かれし者たち~
新型コロナ感染症の影響で、2021年の大会は延期を余儀なくされ、季節も夏、秋、冬と移り変わり、しばらく大会のことも頭の中から薄れていった。
2022年1月、年初の社長の挨拶で、忘れかけていたトライアスロン大会において、ヤマトのリレーチームの結成と出場準備を進めるよう下知があった。
昨年のスイムの記録は2年間は有効なので、参加資格がある3人から選出すればいいとして、バイク78kmとラン20kmの2名を社員から選抜しないといけない。
ラン担当の候補としては、社内に走れる人はたくさんいるし、準備期間もそれほど考えなくていいだろう。
問題はバイクだ。社員の中で自転車を趣味にしているような人は聞いたことがない。
社長からは「俺の自転車を貸すから、誰か出てくれる人いないかな」と相談を受けていた。
この時すでに4月を過ぎて、大会は約2ヵ月後に迫っていた。
予想通り、ラン担当はすぐ決まった。
学生時代は陸上部に所属し、ハーフマラソンの経験も豊富で、今もトレーニングを継続している栗原君(通称K)だ。
ランは俺に任せろを言わんばかりである。安心感が半端ない。
スイム担当はトゥアン君が選ばれた。
資格保有者3人のタイムは伯仲しているが、20代半ばという若さと、軍隊仕込みの身体能力の高さから、あと2ヵ月間の練習で、さらにタイムが伸びるはずだ。
一方、バイク担当がなかなか決まらない。このままではマズイ。
未経験でいきなり2か月後のレースに出てみない?なんて言われて(しかも78km)、出ようって言う人がいる方が奇跡だ。
ん?まてよ。
「エントリー締め切りまで、あと数日しかなくない?」
今日明日にはチームを結成しなければならない。さらに状況は切迫した。
もう健康な人なら誰でもいい。
会った人に端から声をかけていくことにした。
最初に声がけしたのが自動機課の林さんだ。
そしてなんと彼は2つ返事でOKしてくれたのである。
もちろんバイクの経験はない。にも関わらずである。
ホントに?いいの?どうして?
以前からバイクには興味があったらしいが、直接的な動機としては、運動不足解消とメタボ対策だそうだ。
スイム担当のトゥアン、ラン担当の栗原君、バイク担当の林さん
導かれた3人によって、ここにリレーチームが誕生した!
「ヤマトバックス」と命名されたヤマトチームは無事エントリーを完了できたのである。
第三話へ続く
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