今回は金属の知識がなくてもわかるように、アルミとステンレスの違いや特徴を簡単に解説します。
日常生活で見かけるアルミやステンレスですが、「どんな違いがあるの?」と聞かれると答えるのが難しいですよね。
例えば、アルミは軽さや加工のしやすさが強みで、ステンレスは耐久性高いことや錆びにくさがあげられます。
でも、見た目が少し似ているのに、軽さや錆びやすさ、耐久性が違うのはなぜなのでしょう?
気になってきましたか?
それでは解説していきます!
ーもくじー
アルミとステンレスの違いについて
ステンレスとアルミはどちらも普段の生活や仕事の場面でもよく使われ、見た目も少し似ている金属ですが、冒頭でも述べた通りそれぞれ異なる特徴を持っています。
それぞれの違いを簡単に表にまとめたのでご覧ください
特性 | アルミ (アルミニウム) | ステンレス (ステンレス鋼) |
重さ | 軽い (鉄の約1/3の重さ) | 重い (アルミより約3倍重い) |
耐食性 | 高い (腐食しやすい場合がある) | 非常に高い (錆びにくい) |
強度 | やや低い | 高い |
加工のしやすさ | 加工しやすい | 加工が難しい場合もある |
熱伝導率 | 高い (熱を伝えやすい) | 低い (断熱性がある) |
価格 | 比較的安い | 比較的高い |
用途例 | 飲料缶、窓枠、自動車部品 | キッチン用品、建材、医療機器 |
簡単にまとめるとこのような違いがあります。
つづいてそれぞれの違いについて詳しく解説していきます。
■重さ
ステンレスとアルミの重さについては、アルミの方がステンレスよりも軽いです。
アルミは他の金属に比べて密度が低いため、とても軽いのが特徴です。
例えば、同じ大きさの鉄やステンレスと比べても、約3分の1ほどの重さしかありません。
Q.金属の密度とは? |
物質がどれだけ詰まっているかを表す指標で、アルミは鉄やステンレスに比べて原子が詰まっている割合が少ないため、同じ体積でも重さが軽くなります。 例えば、ステンレスは約7.87g/cm³(種類により若干異なりますが一般的な数値)に対し、アルミは2.70g/cm³と約3分の1です。 |
■耐食性(さいしょくせい):サビにくさ
本来アルミもステンレスも、サビにくい素材と言われていますが、アルミの方がステンレスより錆びやすいです。
ステンレスは鉄(Fe)にクロム(Cr)を加えた合金で、正式にはステンレススチールまたはステンレス鋼といい「錆びない鋼」という意味になります。
勘違いしてはいけないのが、ステンレスは全く錆びないというわけではありません。
■硬さ(強度)
アルミとステンレス見た目は似てますが、硬さはステンレスの方がアルミよりも硬いです。
ステンレスは圧力を受け続けたときに、一定の圧力を受けると急に弱くなる「降伏」という現象がなく、鉄よりも強度は高いとされています。
また、アルミはステンレスに比べて傷がつきやすいです。
■加工のしやすさ
比較的にステンレスよりもアルミの方が加工しやすいと言われています。
その理由はアルミの特性にあります。
アルミは軽いうえに強度が高く、電気をよく通します。
切削加工に利用されているアルミの多くは純粋なアルミではなく、アルミに他の元素を化合することで、様々な特性を付与しています。
これをアルミニウム合金と言います。
アルミニウム合金は、紙のように薄い箔や、複雑な形状の押出形材を容易に製造することができることから、きわめて広い用途で使われています。
アルミは塑性加工(そせいかこう)がしやすく、様々な形状に成形することが可能です。
また切削加工性にも優れています。
さらに、アルミは融点が低いという性質も持っています。
このため、溶けていても表面が酸化皮膜で覆われているのでガスを吸収しにくくなり、湯流れが良いとされてます。
Q.塑性加工(そせいかこう)とは? |
塑性加工とは、材料に力を加えて形を変える製造技術のことです。 |
Q.湯流(ゆながれ)とは? |
湯流れとは、液体金属が鋳型内で流動し、形を成す過程のことです。 |
■コスト面
アルミはコストパフォーマンスにも優れています。
アルミは他の金属と比べると腐食しにくく、融点が低いため、使用後のアルミ製品を溶かして再生することが可能です。
このため、再生地金をつくるのに必要なエネルギーは、新地金と比べるとわずか3%ということから、環境にやさしい経済的な材料だとも言えます。
一方、ステンレスは難削材として分類されています。
アルミと違い、熱伝導率が低いために切削加工時の際に発生する熱が逃げにくく工具のほうに負担がかかり、摩耗が進行してしまいます。
あわせて、加工硬化性が大きい材質でもあるので、ステンレスを加工する事で工具寿命が短くなってしまいます。
Q.加工硬化とは? |
金属に加工を加えると、普段よりも硬さが増す現象のことです |
また、工具との親和性が高く、切粉が刃物に溶着しやすいため、工具や切刃の刃先が細かく欠けてしまうという「チッピング」が発生します。
そのため、加工精度がどうしても下がってしまう材質なので、加工の際には注意が必要です。
アルミの特徴について
アルミニウムは軽量で耐久性に優れた金属で、建築、輸送機、家電製品など幅広い分野で利用されています。
ここでは、アルミの基本情報と主な特徴を紹介します。
アルミの基本情報
アルミは地球上に豊富に存在する金属で、主にボーキサイトという鉱石から精錬されます。銀白色の外観を持ち、軽量でリサイクルが容易な点が特徴です。
そのため、環境に優しい素材としても注目されています。
特徴❶ 軽量で強度が高い
アルミは鉄の約1/3の重さで、軽量化が求められる輸送機器や建築資材に最適です。
合金化することで強度も向上し、軽さと強さを兼ね備えた構造材として幅広く利用されています。
特徴❷ 優れた耐食性と加工性
アルミは酸化膜を形成することで腐食を防ぎ、高い耐食性を持ちます。
そのため、屋外や湿気の多い環境でも使用可能です。
また、加工が容易で、さまざまな形状や用途に対応できる点も大きな利点です。
アルミはこれらの特性により、日常生活から産業分野まで幅広く活用されています。
ステンレスは、サビに強く耐久性が高い金属で、機能性とデザイン性を兼ね備えた素材として多くの分野で利用されています。
ステンレスの特徴について
ステンレスの基本情報
ステンレスは鉄にクロムやニッケルを加えた合金で、表面に形成される保護膜によって腐食を防ぎます。
耐久性と加工のしやすさから、工業製品から日常品まで幅広く使われています。
特徴❶ サビに強く耐久性が高い
ステンレスは湿気や塩分の影響を受けにくく、過酷な環境でも長期間使用可能です。
また、耐熱性も高く、調理器具や工業用設備などにも適しています。
特徴❷ 高い加工性で多用途に対応
ステンレスは硬さと加工性を兼ね備え、溶接や切削が容易です。
建築材料、医療機器、装飾品など、多岐にわたる製品に活用され、用途に応じた仕上げが可能です。
機能性と美観を兼ねたステンレスは、さまざまな場面で欠かせない存在となっています。
身の回りにあるアルミとステンレス製品をご紹介
アルミ製品:
飲料缶: 軽量でリサイクルしやすく、日常的に使用されます。
ノートパソコン: 軽くて頑丈なため、多くのモデルに採用されています。
窓枠: 耐食性があり、建物の窓枠に利用されています。
ステンレス製品:
キッチン用品: 包丁や鍋など、耐久性と衛生面で優れています。
洗面台: 水に強く、錆びにくいため、清潔さを保てます。
自動車部品: 耐腐食性が高く、エンジン部品などに使用されます。
このように、アルミとステンレスはそれぞれの特性を生かして、日常生活のさまざまな場面で活躍しています。
じつはアルミ、ステンレスと言ってもいろんな種類がある
ここまでアルミとステンレスという大きな分け方で解説してきましたが、じつはアルミとステンレスにもさらに細かく種類分けがされています。
アルミであれば
A5056
A6061
A2017など
ステンレスであれば
SUS303
SUS304
SUS316
SUS430など
含有する元素の量や種類の違いによって、アルミやステンレスのなかでもたくさんの種類があります。
含有する成分の差で”耐食性がより高い”や、”強度がより高い”など様々な特徴があります。
それぞれを深く追求した記事はまた別途作成したいと思います。
まとめ:それぞれの違いを知り、用途に応じた適切な材料選択しましょう!
今回の記事ではアルミとステンレスの違いについて解説しました。
違いについて再度表を掲載しておきます。
特性 | アルミ (アルミニウム) | ステンレス (ステンレス鋼) |
重さ | 軽い (鉄の約1/3の重さ) | 重い (アルミより約3倍重い) |
耐食性 | 高い (腐食しやすい場合がある) | 非常に高い (錆びにくい) |
強度 | やや低い | 高い |
加工のしやすさ | 加工しやすい | 加工が難しい場合もある |
熱伝導率 | 高い (熱を伝えやすい) | 低い (断熱性がある) |
価格 | 比較的安い | 比較的高い |
用途例 | 飲料缶、窓枠、自動車部品 | キッチン用品、建材、医療機器 |
アルミやステンレスといったおおきな分け方だと、このような違いがあります。
ここまで開設した違いや、特性を踏まえて用途に応じた適切な材料選択が重要です。
弊社で作っているアルミ・ステンレス製品について
使用用途に合わせて様々な材料の加工が可能です。
対応可能な材料については下記をご覧ください。
深穴、長尺、多条ねじなどの加工実績があります。
お気軽にお問い合わせ下さい。
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