ステンレスが錆びる理由とは?原因と対策
- waki11
- 1月15日
- 読了時間: 6分
更新日:1月16日

「ステンレスなんだから、錆びないでしょう?」 そう思われている方は多いのではないでしょうか。
確かにステンレスは、その名の通り「Stain(汚れ・錆び)less(少ない)」な金属であり、非常に錆びにくい優れた素材です。
しかし、実は「絶対に錆びない金属」ではありません。
私たち精密加工の現場でも、ステンレスは非常に身近な素材ですが、扱い方を間違えると錆びてしまうことがあります。
そこには、ステンレスを守っている「ある膜」と、環境との深い関係がありました。
この記事では、金属加工のプロの視点から、なぜステンレスが錆びてしまうのか、その意外なメカニズムと、長く美しく使うための具体的な対策について分かりやすく解説します。
【目次】
┗ ステンレスの主な特性とメカニズム
┗ 環境要因がもたらす影響
・塩化物(塩分)の影響
・温度の影響
・酸素の有無
・汚れともらい錆
┗ 金属同士の接触による影響
┗ 水分や汚れの影響
┗ 化学物質の影響
・塩化物イオン
・酸・アルカリ
・タンニン
┗ 定期的なメンテナンスの重要性
┗ 適切な使用方法と保管方法
┗ 防錆コーティングの活用
ステンレスが錆びる理由とは?
ステンレスは「錆びにくい」という非常に優れた特性を持ちますが、決して「万能」ではありません。
その強みは表面の薄い膜(不働態被膜)に依存しており、特定の環境要因によってその限界を露呈します。
ステンレスの特性と限界、そして環境が与える影響について整理しました。
1. ステンレスの主な特性とメカニズム
ステンレス鋼の最大の特徴は、含有されるクロム(Cr)が空気中の酸素と結びつき、表面に極薄の「不働態被膜」を形成することです。
• 自己修復機能: 表面に傷がついても、周囲に酸素があれば瞬時に膜が再生されます。
• 耐食性: この膜がバリアとなり、内部の鉄が酸化(腐食)するのを防ぎます。
• 機械的性質: 高温での強度が比較的高く、低温環境でも脆くなりにくい(特にSUS304などのオーステナイト系)という特徴があります。
2.環境要因がもたらす影響
ステンレスの寿命や性能は、周囲の環境に強く左右されます。
① 塩化物(塩分)の影響
最も一般的な「天敵」です。海沿いの潮風や融雪剤に含まれる塩素イオンは、不働態被膜を破壊します。
• 影響: 海岸からの距離が近いほど、耐食性の高いグレード(SUS316など)の選定が必要になります。
② 温度の影響
温度が上がると、化学反応が加速し腐食リスクが高まります。
• 高温限界: 一般的なSUS304で連続使用は約800℃前後ですが、強度はそれより低い温度から低下し始めます。
• 湿熱環境: 高温多湿な環境では、水膜による腐食や応力腐食割れが発生しやすくなります。
③ 酸素の有無
ステンレスは「酸素があるから錆びない」というパラドックスを持ちます。
• 影響: 泥の中に埋められたり、水が停滞して酸素が欠乏する環境では、不働態被膜が維持できず、急速に腐食が進みます。
④ 汚れと「もらい錆」
表面に鉄粉や汚れが付着すると、そこが起点となって被膜の再生を妨げます。
• 影響: ステンレス自体は健全でも、付着した鉄粉が錆び(もらい錆)、それがステンレス内部へと腐食を誘発します。
ステンレスが錆びる原因
金属同士の接触による影響
ステンレスの表面に鉄などの金属が付着したまま放置してしまうと、付着した金属が錆びることで接触している部分が錆びてしまう現象です。(もらい錆)
水分や汚れの影響
ステンレスの表面に汚れや水分が残っていると、その部分に不動態皮膜を形成することができないため、錆びやすい状態となってしまいます。
*不動態皮膜とは、ステンレス中に含まれるクロムと酸素が反応して形成されるもの
化学物質の影響
塩化物イオン
: 海水、潮風、水道水中の塩素、融雪剤など。
不動態皮膜を破壊し、孔食(穴が空く腐食)や隙間腐食を引き起こします。
酸・アルカリ:
: 強酸(塩酸など)強アルカリ、塩素系漂白剤、酸性洗剤
不動態皮膜の生成を妨げ、腐食を加速させる。高温環境下では進行しやすくなる。
タンニン
: 山菜、レンコン、ほうれん草などの食品に含まれる成分。
長時間付着すると不動態皮膜が劣化する 。
ステンレスの錆び対策と予防法
定期的なメンテナンスの重要性
ステンレスは耐久性・耐熱性・耐食性に優れていますが、メンテナンスを怠ると錆びが発生する可能性があります。
中性洗剤を用いた洗浄やクリームクレンザーで軽く研磨することで錆びを防止することができます。
適切な使用方法と保管方法
・使用方法
摩擦や傷などにより摩耗した状態で使用すると錆びが発生しやすくなるので、定期的な確認とメンテナンスを行いましょう。
・保管方法
温度や湿度の高い場所や塩素や酸性の多い液体を使用している場所を避けることで、錆びを防ぐことができます。
防錆コーティングの活用
メンテナンスをする以外にも防錆コーティング(ステンレスコート)を使用することにより、錆びを防ぐことができます。
※ステンレスコートとは?
アクリルシリコン樹脂に細かく砕いたステンレスを配合したものです。
塗布面にステンレスの被膜を形成することにより、腐食・傷・錆・汚れなどを防ぐことができます。
【まとめ】ステンレスは「環境」と「手入れ」で寿命が変わる
ステンレスは非常に優秀な金属ですが、その強さは表面の「不働態被膜(ふどうたいひまく)」という薄いガードによって保たれています。
このガードが機能しなくなる環境下では、ステンレスと言えども錆びてしまいます。
今回のポイントを整理すると、以下のようになります。
錆びない理由
クロムと酸素が結びついてできる「不働態被膜」が内部を守っているから。
錆びる原因
塩分・酸: 海風や塩素系洗剤などは被膜を破壊します。
もらい錆: 他の金属(鉄粉など)が付着すると、そこから錆が移ります。
酸素不足: 汚れで覆われたり、空気が遮断されると、被膜が再生できなくなります。
対策:
こまめに汚れや水分を拭き取る(中性洗剤などの使用)。
傷や異金属との接触を避ける。
環境に合わせて、防錆コーティングを活用する。
ステンレスは「手入れをすれば長く輝き続ける金属」です。
正しい知識を持ってメンテナンスを行うことで、その優れた特性を最大限に引き出すことができます。



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