精密加工の基本概念とその多様な種類とは?
- waki11
- 9月16日
- 読了時間: 8分

日々進化する製造業の現場では、わずか数ミクロンの誤差も許されないほどの高精度な加工技術が求められています。
特に自動車、航空機、医療機器、半導体などの分野では、部品の精度が製品の性能や安全性に直結するため、金属の精密加工は欠かせない存在となっています。
本記事では、精密加工の基本概念から、代表的な加工方法(切削・研削・放電・レーザー・プレス)、応用分野、最新技術、そして加工方法の選定や品質管理のポイントまで、幅広く解説します。
精密加工の世界に初めて触れる方にも、すでに業界に携わっている方にも役立つ内容をお届けします。
精密加工の基本概念
精密加工とは
一般的な旋盤加工やプレス加工よりも高精度の寸法や面粗度「表面の滑らかさ」を実現する加工方法です。具体的には0.001〜0.01mmの寸法精度を指します。
精密加工の重要性
産業機械、IT関連機械、自動車、航空機、医療機器、半導体、光学機器など様々な所で精密加工部品が使われます。
高度な運動を支える部品、モノを作るための部品として使われることが多く高い信頼性、高強度、形状の複雑化などが求められるため精密加工が重要となってきます。
精密加工の種類
精密加工とは、ミクロン単位の精度で材料の形状を整える加工技術で
切削加工、研削加工、放電加工、レーザー加工、プレス加工の五種類があります。
切削加工とは?
切削加工は切削工具を使用して工作物を削り、目的に合わせた形状に加工する方法で、
旋削加工、フライス加工、穴あけ加工の三種類があります。
1つ目|旋削加工は回転している工作物に工具を押し当て、削っていく加工方法です。
2つ目|フライス加工は工作物を固定し、回転した工具で削っていく加工方法です。
3つ目|穴あけ加工は回転した工具で工作物に穴をあける加工方法です。
研削加工とは?
研削加工は高速で回転する砥石を工作物に押し当て、表面を削っていく加工方法で、平面研削、内面研削、円筒研削、センタレス研削、ホーニング加工、プロファイル研削、
歯車研削の七種類があります。
・平面研削は平面研削盤の上に工作物を乗せ、高速で回転する砥石を押し当て、
平面に削っていく加工方法です。
・内面研削は穴の開いた工作物を回転させ、工作物とは逆方向に回転した砥石を
穴の内面に押し当て、削っていく加工方法です。
・円筒研削は円筒状の工作物を回転させ、工作物とは逆方向に回転した砥石を
外周に押し当て、削っていく加工方法です。
・センタレス研削は円筒研削と同じように工作物の表面を削っていく加工方法に
なりますが、円筒研削とは違い研削砥石・調整砥石・ブレードの三点で工作物を
固定できるので加工物の取り付け・取外しに時間が掛からず、作業時間を
短縮することができます。
さらに、同じ大きさの工作物を大量に加工できるため大量生産にも向いています。
・ホーニング加工は内面研削と同じような方法で円筒状の工作物の内面に
回転・往復運動する砥石を押し当て、削っていく加工方法です。
・プロファイル研削は複雑な形状をした部品(精密金型部品や特殊工具など)を造る際に
使用され、工作物の上に部品の形状を拡大投影し、投影図に沿って手動または自動で
研削する加工方法です。
・歯車研削は歯車の歯面を砥石で精密に研磨していく加工方法で、歯車の寸法精度や
表面の粗さを向上させ、精密な研削により歯車同士が噛み合う時に発生する騒音や振動
を抑制することができます。
放電加工とは?
放電加工は放電現象によって発生する熱を利用し、工作物を溶かしながら加工していく
方法で、ワイヤー放電加工、形彫放電加工の二種類があります。
・ワイヤー放電加工はワイヤー線を電極として工作物との間に放電を発生させ、
糸鋸のようにワイヤーを動かしながら様々な形状に切り抜く加工方法です。
・形彫放電加工は加工液が入った形彫放電加工機の中に工作物をセットし、
銅やグラファイト、タングステンなどの電極との間で放電を連続して発生させ、
電極の形状を工作物に転写する加工方法です。
レーザー加工とは?
レーザー加工は高エネルギー密度のレーザー光を工作物に照射し、融解・蒸発させながら
切断、穴あけ、接合などを行う加工方法で、除去加工、接合加工、改質加工、変形加工の
四種類があります。
・除去加工はレーザー光を工作物に照射し、融解・蒸発させ、溶かしながら切断や穴あけ
を行う加工方法です。
・接合加工はレーザー光を工作物に照射し、融解させ、工作物同士の接合を行う
加工方法です。
・改質加工はレーザー光を工作物の表面に照射し、融点に達しない温度まで加熱させ、
温度変化によって表面や内部の特性(耐摩耗性、耐食性、伝導性など)を変化させる
加工方法です。
・変形加工はレーザー光を工作物に照射し、熱を加えて変形させる加工方法です。
(例)収縮、反り、曲げ など
プレス加工とは?
プレス加工とはプレス機を使用して工作物に圧力を加えることで、せん断・曲げ・金型
の形に成形するなどの多種多様な加工をすることができ、せん断加工、曲げ加工、
絞り加工、成形加工、パンチプレス加工、圧縮加工の六種類があります。
・せん断加工はプレス機の圧力によって工作物をせん断する加工方法です。
外形を切り抜く「打ち抜き」や穴を開ける「穴あけ」などがあります。
・曲げ加工は工作物を金型に挟み込んだ状態でプレス機を使用し、圧力を加え、
様々な角度や形状に折り曲げる加工方法です。
・絞り加工はプレス機を使用し、工作物を金型に押し込むことでカップ状や箱型の容器に
成形する加工方法です。
・成形加工は曲げ加工や絞り加工と類似していますが、工作物を曲線に加工できると
いった特徴があります。
・パンチプレス加工はプレス機を使用し、工作物を金型に押し込むことで穴抜きや
打ち抜きを行う加工方法です。
・圧縮加工はプレス機を使用し、工作物を圧縮することで断面形状も変形させることが
できる加工方法です。
精密加工の応用分野
自動車産業における精密加工
自動車産業は日本における主要産業の一つであり、高精度、高品質な各部品を必要としています。自動車部品には3万点以上の部品が使用されており、鍛造、プレス加工、機械加工、熱処理、表面処理など多くの工程を経て自動車部品が製造されています。
また昨今ではEV関連の開発が進み、部品が大型化、複雑化しており、また軽量化も求められてているためそのニーズに対応する高い技術力が必要です。
医療機器産業における精密加工
医療機器における精密加工は非常に高い精度と品質の部品を製造する技術が求められます
よく使われる加工技術としてミクロン単位(0.001~)を制御できるCNC旋盤、フライス盤、ワイヤー放電加工、レーザー加工があります。またチタンなどの難削材を加工する技術も求められます。
精密加工のプロセスと技術
設計から製造までの流れ
企画、構想
市場にどのようなニーズがあるかを調査、製品のコンセプトや構想をまとめ、技術など課題を整理しまとめる
設計
使用す材質の選定、スケッチや3DCADを用いて、具体的な機能や構造、デザインの設計図や仕様書を作成します。
試作・評価
試作品を作成し、性能や機能、製品が安全に動作するかどうかの確認をする
課題を特定し、問題、改善点があれば設計変更(フィードバック)を行う
製造・量産準備
製造方法を決定し、設備の準備、量産に向けた効率的なラインを設計する
必要な部品・材料の調達
製造
製品の製造・量産を開始する
品質の管理、各部品が仕様基準を満たしているかをチェックする
最新の加工技術の内容
3Dプリンター
3Dモデルデータを基に、材料を結合して造形物を加工します。多くの場合は、造形層を積み重ねる形態をとっています。
特に金属の3Dプリンターの精度、速度向上がの技術革新が顕著であり、複雑な形状の部品を使用する航空、宇宙、医療など様々な分野の製造において普及が始まっています
同時5軸加工
従来の3軸加工機は通常、X軸、Y軸、Z軸という3軸の動作が可能です。5軸加工機になると「回転」と「傾斜」という2軸の加工が追加になります。曲面や、アンダーカットなど複雑な形状にも対応できる技術です。※加工例:インペラ
レーザー加工
従来の刃物では加工が困難な素材へレーザー光を照射することにより切削・穴加工・マーキング加工が可能です。非接触であるため素材の応力、圧力による変形がありません
精密加工の選び方と注意点
適切な加工方法の選定
形状の複雑化や高精度での量産が必要な為、複合NC自動旋盤が多く使われます。
その他に0.001mmの寸法精度や面粗度を出すために研磨工程も必要な場合もあります。
品質管理と検査の重要性
不良品の流出や品質の低下は企業の信頼性を失うことになるので品質管理と検査は重要になります。
ヤマトでは3次元測定器、形状測定器、画像測定器など様々な測定器で検査することにより不良品の流出を防ぎます。また複合NC自動旋盤やマシニングセンター、研磨機も多種類あるので形状や寸法精度に合わせて加工可能です。
まとめ:精密加工が支える未来のものづくり
精密加工は、わずか数ミクロンの精度で形状を整える高度な技術であり、現代の製造業において欠かせない存在です。
切削・研削・放電・レーザー・プレスなど多様な加工方法を駆使し、自動車や医療機器、半導体などの分野で高品質な部品を生み出しています。
さらに、3Dプリンターや同時5軸加工などの最新技術の登場により、より複雑で高精度な加工が可能となり、製品開発の可能性はますます広がっています。
精密加工は、単なる技術ではなく、信頼性・安全性・革新性を支えるものづくりの基盤です。
これからの製造業を担う皆さんにとって、精密加工の理解と活用は、未来を切り拓く大きな力となるでしょう。



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